お待たせしております、武田鈑金製作所の何でも屋、内田愛理です。
今回は番外編と称して私自身の体験談を基に、鈑金の理想と現実?をお送りします。
なぜかって?
考えてもみてください、30を過ぎた女性がそんな鈑金っていうカテゴリを心から楽しんでできるとは世間様の評価で言えば納得のできかねる話でしょう!
なので書いておくことにより皆様にこのブログが良いとこ取りのヤラセではないことを分かっていただく所存であります。
業界素人参戦から現在に至るまでの2年間、衝撃の連続でした。
鈑金ってこんなイメージだけど実際は?楽しいこと苦しいこと聞かせてよ!…ご覧いただいている皆様にお伝えできればと思います。
①(でっかい機械…ちっさい工具…油?鉄…あれは…ピカピカしてる板だけど、何?)
入社してしばらくはこのような感じでした。
鉄くらいは分かります、フライパンくらい見たことありますから。
衝撃はすぐ間近にありました。
社長「鉄にも種類があるんだよ」
はっはーん馬鹿にしないでくださいよ、それくらい見当つきますって笑
…つきませんでしたけどね、鉄って鉄じゃん、じゃあ血液の成分の鉄は何鉄なの??ん?
あるんですって、種類が。言わせると「面(ツラ)が違うから見れば分かるさぁ」だそうです。注釈(サンセン・ミガキ材と呼ばれる)
場内を見ているとピカピカしているのはステンレス。これもまぁシンクなどで見たことありますから、少しは分かります。
社長「ステンレスにも種類があるんだよ」
ありますよねえそりゃあ、鉄のツラが違うくらいだもの、ステンレスのツラも違うんでしょう?
他にどうやって見分けるんですか?
「磁石がくっつくか、くっつかないかだよ!」
えー、その素材指定の製品は磁石つけて確認するの?ほんとに?毎回?
はい、入りたての頃はやっていました。まぁ「鋼板のツラ」を見るよりは、わたくしの様な素人には、分かりやすかった…ですよ?注釈(430.304などステンレスでも含有量で呼び名が変わる)
今では「ツラ」、分かるようになりましたけどね。キャンプ用品とか買いに行ってその場でひっくり返してラベル見て何の素材か答え合わせするようにはなりましたけどね。
あるんですよ、ツラ。
他に自社で扱うのは、処理鋼板と呼ばれるボンデ・K2・あとは亜鉛、アルミです。
塗装のあるなしや、耐久(サビや劣化)、外観か内部部品かで使い分けたりしますよ。
②楽しいこと、苦しいこと
いきますよ、働いてみたいけど実際どうよ?に対する率直な意見。
・形作るって面白い
我々の生活は便利です、便利なように物が開発され、便利なように使用され、更に便利なようにアップグレードされる、そんなモノたちに囲まれています。
使用者としては「ここが歯がゆいんだけどね」「あともうちょっとこうなればいいのに」の連続かと思います。
何気ない玄関の傘立て、定規、ペン、クッション、ありとあらゆるものがその思考の範疇にあります。
そして一転、製品を作る側になってみたら、こう思いました。
「お客様のおっしゃることも、分かるけどさぁ…」
作る過程においてはたくさんの障害があります、私が立体を書き起こせなくて形に辿り着けなかったこと、私がようやく鋼板を曲げてみたのに変な角度になっちゃって箱型にならなかったことや…表と裏を間違えて設計しちゃったこと。
ちょっと私も溶接してみちゃおっかなあなんて甘い考えでやってみたら火花がはじけ飛んだこと、
作る過程というよりは自分の至らなさに起因する必然的な障害ですけどね。
それでも、その数々の苦難をちょこまかちょこまか解決して、思った通りの製品や造形ができたとき。
あぁ楽しいなあ、って思います。
それと同時に思うのが「自分の理想形に仕上げるにはどれだけの努力と時間が必要か」です。
故に「歯がゆい、でも設計や構造の気持ちは分かる!」「あとちょっと、でもそこがここでリカバリーされてるんだよね」なんて思ったりできるようになったんです。
ホームセンターなんて眼福ですよ、未知の構造と既知の知識で興味が湧くものが実際に触って確かめることができるんですから。
買い手と売り手のどちら側にも立ってモノを作っていく、仕上げていくことは、何より幸せです。
・暑い、寒い、重い、納期!
ブログなのであまりネガティブなことは書いちゃいけないんですけどね、こればっかりは仕方ない。
夏は暑く、冬は寒く、持ち上げる製品は重く…とは言っても小型の製品が多いので正直良い筋トレ程度で済んでいます。
納期には追われる、明日の分を今日仕上げるために何週間かの予定をきっちり見据える。
書いてても思いましたけど、境遇は違えどどの会社様でも同じようなことって多いですよね。
では、多分私自身は鈑金に対して苦しいこととかって余りないんだと思います。
すっごくポジティブに言えば「四季折々の風を肌で感じられて、筋トレもできて、納期さえ間に合えばOK」ということになりますからね。
良い方に言いすぎかしら、でもその通りなのでOK。
③各々の、実際の仕事のやり方
武田鈑金には、武田鈑金の風潮があります。
私が入社して最も思ったことは
「この人たち、ぜんっぜん怒んないだけど大丈夫か…?」でしたね。
多分今までの会社の雰囲気?というか空気の流れ?もそうだったのでしょうね、そうだったであろう。
各々の仕事の仕方を尊重してくれているように非常に感じました、これは皆さまに恩義に尽きます。
もちろん大ポカやらかしたときにはきちんと叱ってくれますよ。そして次へ立て直す為に力添えをしていただけることが大きいです。
でもそれ以外のリカバリーの効くミス、自分の注意散漫から発生したミス、そういったことを否定されることは無いです。
皆さん、職人なんだなあって思います。職人ではない身からすると。
自分の為に仕事を熱心にできる人たちが集まって協力している、そんなイメージです。
上記にも茶化して書きましたけど四季折々の風を肌で感じられて、筋トレもできて、納期さえ間に合えばOK…みなさんこのようなスタンスなんでしょうね?…そうなのであろう。
今回はここらでお暇とさせていただきますね、鈑金小話では私自身だけでなく色々な人やモノにスポットを当てて書けていけたらと思っています。
まぁ書くのは私なのでどうしても私の話や主観になりがちですけど…またお付き合いいただければ幸いです。